――2つのAIが数ヶ月かけて負けた高勝率EAに、3つ目のAIと挑んだ記録【前編】
こんにちは。EA Designer Kuuです。いきなりですが、あなたに質問させてください。
あなたが今使っているEA、あるいは買おうとしているEA。その勝率は何%ですか?もし「90%を超えています」と答えられるなら、この記事はあなたのために書きました。最後まで読むと、その数字の見え方が少し変わるはずです。
今日お見せするのは、私が運用している、あるゴールドEAの話です。名前は伏せておきます。勝率は93.85%。10回打って9回以上勝つ。数字だけ見れば、文句のつけようがありません。
でも私は、このEAを「完成」だとは思っていませんでした。むしろ、ずっと不安でした。そしてその不安は正しかった。今回、AIと一緒にこのEAを徹底的に解剖して、その勝率がどれだけ薄氷の上に乗っていたかが、数字ではっきり見えてしまったんです。
損益分岐勝率とは?あなたのEAは「あと何ポイント」で赤字になるか
まず、あなたに一つだけ計算を覚えて帰ってほしいんです。難しくありません。電卓があればできます。用意するのは、あなたのEAの「平均勝ちトレード」と「平均負けトレード」。MT5のレポートに必ず載っています。
私のEAはこうでした。平均勝ちトレード:24,670円/平均負けトレード:206,799円。気づきますか。1回の負けは、1回の勝ちの8.38倍なんです。コツコツ稼いだ8回分の利益が、たった1回の負けで消える。ここで、こういう計算をします。
= 206,799 ÷(24,670 + 206,799)
= 89.34%
この「89.34%」が何かというと、この勝率を下回った瞬間、あなたのEAは赤字になるという境界線です。損益分岐勝率と言います。そして私のEAの実際の勝率は、93.85%。実際の勝率93.85%、赤字に転落する勝率89.34%、その差はわずか4.51ポイントです。
勝率93.85%と聞くと、鉄壁に見えますよね。でも実態は、崖っぷちから4歩下がったところを歩いているようなものだったんです。相場が少し荒れて勝率が4ポイント落ちれば、この「優秀なEA」は、ただ資金を溶かすだけの機械に変わる。あなたのEAは、その崖から何歩のところにいますか。もし計算してみて、そのマージンが5ポイントもないなら――このあとの話は、他人事ではありません。
犯人は「たった数%の負け」に隠れていた
さて、私はこのEAを、AIと一緒に解剖しました。過去のトレード、800回以上を1件ずつ調べたんです。負けトレードは全体の6%ほど。数としては少ない。でも、その負けをさらに細かく見ていくと、ある一種類の負けだけで、損失全体の99.3%を占めていたんです。
その一種類とは何か。「エントリーした瞬間から一度も含み益にならず、逆行し続けたまま沈んだ負け」です。普通の負けトレードは、一度くらいはプラス圏に顔を出します。でも致命傷になった負けは違った。最初から最後まで、一度もプラスにならなかった。ただひたすら、逆に動き続けた。
そして、これらの負けにはもう一つ共通点がありました。やたらと長いんです。損失ワースト10を並べたら、全部が「9時間以上抱えたトレード」でした。つまり、このEAの本当の敵は「負けること」じゃなかった。「負けを、長時間抱え込んでしまうこと」だったんです。
過去に、2つのAIがこの敵に負けている
正直に打ち明けます。このEAを改良しようとしたのは、今回が初めてではありません。過去に私は、当時最新だった2つのAIエージェントを使って、数ヶ月にわたってこのEAの改良に挑みました。結果は、2度とも敗北でした。
リスクを下げようとすると、なぜか総利益まで一緒に削れてしまう。安全にしようとするほど、EAの「稼ぐ力」が死んでいく。どう手を入れても、この高勝率・ハイリスクなロジックそのものに勝てなかったんです。数ヶ月かけて、私は「このEAは、これ以上良くならないのかもしれない」と諦めかけていました。
3つ目のAIは、まず「やらないこと」を決めた
今回、私は3つ目のAIと組みました。面白かったのは、このAIが最初にやったことです。いきなり改良案を出すのではなく、「なぜ過去の改良が失敗したのか」を先に突き止めようとしたんです。そして、過去の敗因をこう言い当てました。「このEAはマージンが4.51ポイントしかない。エントリーの条件をいじれば、勝率は簡単に4ポイント以上落ちる。優位性ごと殺してしまう。だから、エントリーロジックには絶対に触ってはいけない」
これは、過去の私がやっていたことの真逆でした。AIは、エントリーを予測して危険を避ける道を3つ検討し、そのすべてを自分で否定しました。致命傷の負けをエントリー時点で予知できる手がかりは、どこにも存在しなかったからです。「入る前に危険は分からない。だったら、入った後で対処するしかない」。こうしてたどり着いた打ち手は、拍子抜けするほどシンプルでした。ロジックには一切触れない。エントリーもそのまま。ただ、あの「長時間抱え込むこと」に、一つだけ楔を打ち込む。
その楔が何か、ここでは伏せておきます。このEAの、いわば秘密兵器になるものだからです。ただ一つ言えるのは、それは新しいエントリーロジックでも、複雑なフィルターでもない。「負けとの付き合い方」を変える、たった一つの仕組みです。
検証で見えた、もう一つの「罠」|中途半端が一番危ない
その楔を、どのくらいの強さで打ち込むか。AIはそれを、過去2年半ぶんのデータで70通り試しました。楔の強さを変えていくと、成績がなだらかに変化する――と思いきや、ある一点だけ、口座が破綻するゾーンがあったんです。強すぎても弱すぎてもいけない。そして「中途半端」が、一番危なかった。
これは、トレードの世界でよく言われることそのものでした。中途半端に我慢するのが、一番損をする。損切りするなら早く、伸ばすなら伸ばしきる。その中間で迷った瞬間に、一番大きな傷を負う。だから私は、この楔の強さをあえて固定しました。ユーザーがうっかり「破綻ゾーン」に設定してしまわないように。これは秘密兵器であると同時に、触らせないことで守る安全装置でもあるんです。
そして今、実戦に入りました|バックテストは信用しすぎない
こうして生まれた新しいバージョンを、私はたった今、実際のデモ口座でのフォワードテストに投入しました。バックテストでは、はっきりした手応えがありました。でも、正直に言います。バックテストは信用しすぎてはいけないんです。
このEAには、経済指標を避ける仕組みが組み込まれています。指標発表の前後でポジションを閉じたり、エントリーを控えたりする。ところが、この仕組みはバックテストでは再現できません。過去の指標カレンダーを、テスターは持っていないからです。つまり、バックテストと実運用は、そもそも別物になって当たり前。本当の答えは、実際に動かしてみないと分からない。その結果は、後編でお見せします。良い結果でも、悪い結果でも、包み隠さず全部出します。それが、このブログの約束です。
まとめ|勝率という数字単体には、意味がない
あなたのEAの勝率が何%であっても、その数字単体には意味がありません。大事なのは、勝率と損益分岐勝率の「差」。あなたのEAは、崖から何歩のところを歩いているのか。今日お伝えした計算を、ぜひあなたのMT5レポートでやってみてください。その差が十分に広いなら、あなたのEAは健全です。もし数ポイントしかないなら――それは「よく当たるEA」ではなく、「まだ大きく負けていないだけのEA」かもしれません。後編で、また会いましょう。
よくある質問(FAQ)
損益分岐勝率はどうやって計算しますか?
「平均負けトレード ÷(平均勝ちトレード + 平均負けトレード)」で求めます。今回の例では 206,799 ÷(24,670 + 206,799)= 89.34%。この勝率を下回ると、そのEAはトータルで赤字になります。数値はMT5のレポートに載っています。
勝率が高いEAは安全ですか?
勝率だけでは判断できません。1回の負けが1回の勝ちより大きい(今回は8.38倍)と、損益分岐勝率が高くなり、実際の勝率との差(マージン)が小さくなります。マージンが数ポイントしかないEAは、相場が少し荒れただけで赤字に転落するリスクがあります。
高勝率EAのドローダウンはどうすれば抑えられますか?
今回のケースでは、致命傷の負けが「一度も含み益にならず、長時間抱え込んだトレード」に集中していました。エントリーロジックを変えるのではなく、ポジションの保有時間や出口の設計に手を入れるアプローチが有効でした。詳細は後編で検証結果とともに公開します。
※本記事の数値は、デモ口座での過去のフォワードテスト結果に基づきます。将来の利益を保証するものではありません。FX・CFD取引には元本を失うリスクがあります。実際の運用はご自身の判断と責任において行ってください。本記事は特定のEAの購入を推奨するものではありません。

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