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EAのバックテスト結果を公開するとき、その数字が本当に「今配布しているバージョン」のものかを確認しているでしょうか。
私は先日、自作EA「PW MTFS」の検証結果を記事にまとめました。ところが公開直前に誤りに気づき、結局3回やり直すことになりました。3回とも違う数字が出ました。この記事では、その経緯と最終的な検証結果を公開します。
最終的な検証結果
まず結論の数字です。XAUUSD専用EA「PW MTFS Ver1.25」を、2024年1月から2026年8月まで実ティック100%でバックテストしました。

| 総損益 | +154,207円(初期100万円 / +15.4%) |
| 最大ドローダウン | 39,560円(3.48%) |
| 勝率 | 79.89%(368取引中 294勝74敗) |
| プロフィットファクター | 1.34 |
| リカバリーファクター | 3.37 |
| 最大連勝/最大連敗 | 17回/2回 |
月次成績も全期間(31ヶ月分)公開します。

- 2024年:+24,350円
- 2025年:+47,972円
- 2026年(1〜7月):+81,885円
プラス22ヶ月、マイナス9ヶ月。最も悪い月は2025年8月の−15,062円、最も良い月は2026年1月の+37,292円でした。毎月増え続けるEAではありません。おおよそ3ヶ月に1回は負ける月があります。
設計:下位足M3/上位足M15の二階建て

PW MTFSはマルチタイムフレーム(MTF)型のEAです。下位足でエントリーと決済のタイミングを決め、上位足でトレンドの方向を絞り込むという二階建ての構造になっています。
問題は「どの時間足を組み合わせるか」です。「下位足5分・上位足1時間が定番」といった通説はありますが、根拠が示されることは稀です。そこでMT5のストラテジーテスターで、実ティック100%のまま総当たり検証を行いました(下位足1分〜10分 × 上位足10分〜4時間)。
結果は下位足3分(M3)/上位足15分(M15)でした。
意外に思われるかもしれません。上位足に4時間足を置いたほうが大きな流れに乗れそうに感じます。しかし実際には逆で、上位足を長くするほどエントリー機会が減り、トレンド転換時の追随が遅れます。転換直後の往復で損失が積み上がるためです。上位足15分は下位足3分のちょうど5倍。この距離感がゴールドの値動きの速さに最も適合していました。
評価できる点:最大DD3.48%と最大連敗2回
この2つの数字が、このEAの実質的な価値だと考えています。
最大ドローダウン3.48%。100万円の口座であれば、最悪の局面でも含み損は約4万円にとどまります。そして最大連敗が2回。8連敗、10連敗を記録するEAは珍しくありませんが、このEAは3回以上続けて負けていません。
なぜこれが重要か。EAの運用を中断する理由は、多くの場合「成績が悪いから」ではなく「精神的に耐えられなくなるから」です。含み損が膨らみ、不安に耐えきれず底値で停止する。統計的にはプラス期待値でも、その利益は受け取れません。
負けても浅く、連続して負けない。だから運用を継続できる。この点を設計の起点に置いています。
弱点:勝率79.9%でも余裕は5.1ポイントしかない

ここが本記事で最も重要な部分です。
平均利益は+2,060円、平均損失は−6,100円。つまり1回の負けは1回の勝ちの約3倍重いという収支構造です。
この構造で収支がトントンになる勝率を損益分岐勝率と呼びます。計算するとこうなります。
1 ÷ (1 + 2,060 ÷ 6,100) = 74.76%
74.76%勝って、ようやくゼロ。実際の勝率が79.89%なので、余裕はわずか5.14ポイントしかありません。
勝率79.9%と聞けば圧倒的な数字に見えます。しかし中身はこれです。「勝率が高いから安全」ではなく「勝率が高くないと成立しない」EAだということです。勝率が5ポイント落ちれば収支は破綻します。
さらに実運用では、スプレッド拡大やスリッページがこの5.14ポイントをさらに削ります。原因は損切りが1,500pipsと深く、固定利確がない設計にあります。小さく何度も勝ち、たまに大きく負ける。次のバージョンで改善する予定です。
本題:検証を3回やり直した経緯

1回目:古いバージョンで検証していた
最初、私はこの記事をVer1.07の検証結果で書いていました。総損益+213,793円、最大DD5.21%、勝率75.19%。今回の最終結果より総損益は大きく、記事はほぼ完成していました。
ところが公開直前にソースコードを確認したところ、Ver1.07と最新版の間に安全上の重要な修正が複数回入っていることが判明しました。ポジションが増えた際に損切りが一部にしか適用されない不具合などです。
古く、かつ危険なバージョンの好成績を提示して、実際には別のものを配布する。そうなるところでした。
2回目:インジケーターが古いままだった
最新のVer1.25で回し直したところ、総損益+195,103円、最大DDは9.37%。DDがほぼ倍になりました。「改良したのに悪化した」と一瞬考えました。
しかし、まだ誤っていました。このEAはペアのインジケーターとセットで動作します。最新のインジケーター(Ver1.10)ではなく、古いインジケーターのまま検証していたのです。
3回目:正しい組み合わせでの結果
| 指標 | Ver1.25+旧インジ | Ver1.25+インジVer1.10 |
|---|---|---|
| 総損益 | +195,103円 | +154,207円 |
| 最大DD | 9.37% | 3.48% |
| 勝率 | 73.71% | 79.89% |
| 取引数 | 1,084回 | 368回 |
取引数が3分の1に絞られ、ドローダウンが3分の1になり、勝率が6ポイント上昇しました。インジケーターが低品質なエントリーを弾いていたということです。
総損益だけを見れば旧インジケーターの組み合わせのほうが大きい。しかし配布すべきは明らかに後者です。もし1回目の検証で満足していたら、古く危険なバージョンの数字で商品を販売していました。
教訓:AIでEAを作るなら、検証を疑うこと
私はプログラマーではありません。EAはAIと共同で開発しています。
だからこそ「動いたから完成」と考えてしまいがちです。今回のように、バージョンの組み合わせが違うだけで数字が全く変わることに気づけない。
今回それに気づけたのは、AIに「このバージョンで本当に合っているか」を確認させたからです。人ひとりの判断では「おそらく問題ない」で通していたはずです。
AIでEAを開発するなら、作ることよりも検証を疑うことのほうが重要です。この点を強く実感しました。
今後の改善方針
課題は明確です。ペイオフレシオの改善です。
現在の0.338を0.5まで引き上げられれば、損益分岐勝率は66.7%まで下がり、余裕は5.14ポイントから約13ポイントまで拡大します。深すぎる損切り幅と、利確ロジックの見直しが具体的な作業になります。
あわせて実口座でのフォワードテストも進行中です。バックテストとの乖離がこの5.14ポイントをどれだけ削るのか。良い月も悪い月も、そのまま公開していきます。
まとめ
- PW MTFS Ver1.25の検証結果:+154,207円 / 最大DD3.48% / 勝率79.89%(実ティック100%・31ヶ月)
- 強みは浅いドローダウンと最大連敗2回。運用を継続しやすい設計
- 弱点は損益分岐勝率74.76%に対して余裕が5.14ptしかないこと
- EAのバックテストは「EA本体とインジケーターのバージョンの組み合わせ」で数字が激変する
- 公開前に、その数字が今配布するバージョンのものかを必ず確認すべき
PW MTFS Ver1.25 について
PW MTFS Ver1.25 は 100,000円です。
- PW MTFS EA 本体(Ver1.25)
- ペアインジケーター PW_MTFS_indicators Ver1.10(これがないと動作しません)
- パラメーター説明書(PDF)
- 推奨セット設定ファイル
- 導入サポート
ご使用はXAUUSDでお願いします。他の銘柄では成績が変わります。時間足はどれに貼っても構いません(内部でM3/M15を再現します)。
よくある質問(FAQ)
Q. 勝率79.89%なら安全に運用できますか?
A. いいえ。本文で述べたとおり、このEAは損益分岐勝率が74.76%と高く、余裕は5.14ポイントしかありません。勝率が数ポイント低下すれば収支はマイナスに転じます。「勝率が高い=安全」ではない点にご注意ください。
Q. インジケーターだけ、EAだけでも使えますか?
A. 使えません。EA本体とペアインジケーター(Ver1.10)はセットで動作します。本記事で解説したとおり、インジケーターのバージョンが違うだけで成績が大きく変わります。必ず対応するバージョンの組み合わせでご使用ください。
Q. なぜ総損益が小さいほうを採用したのですか?
A. 総損益は旧インジケーターとの組み合わせ(+195,103円)のほうが大きいのですが、最大ドローダウンが9.37%と約3倍でした。運用を継続できるかどうかを重視し、DDが3.48%に収まる正しい組み合わせを採用しています。
Q. どの時間足のチャートに設定すればよいですか?
A. どの時間足でも構いません。EA内部でM3(サイン判定)とM15(トレンド判定)を参照する設計になっているためです。
【免責事項】本記事に掲載している結果は、MetaTrader 5 ストラテジーテスターによる過去のバックテスト結果です。将来の利益を保証するものではありません。FX、CFD、暗号資産関連商品の取引には大きなリスクがあり、元本を失う可能性があります。実運用は必ずご自身の判断と責任において行ってください。本記事は投資助言を目的としたものではありません。価格・キャンペーン内容は予告なく変更される場合があります。
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