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MT5でEAやツールのストップロス幅を「pips」で設定している方に、まず確認していただきたいことがあります。
その設定値を、別の銘柄でもそのまま使っていませんか。
先日、自作の裁量パネル「PW GoldCockpit」をゴールド用の設定のままビットコイン(BTCUSD)のチャートに載せたところ、SLラインが価格のすぐ隣に表示されました。同じ「2000pips」なのに、です。この記事では、その原因と正しい直し方を、ソースコードを確認しながら解説します。
結論:この記事で分かること
- pipsは銘柄の刻み幅に連動するため、同じ数値でも距離がまったく変わる
- ゴールドで約4.8%だったSL幅が、ビットコインでは約0.3%になる
- SL幅はロット自動計算にも連動する。広げてもリスク額は増えない
- ナンピンとピラミッディングの境界は「平均建値が下がるか上がるか」だけ
- 両建て(Hedging)中は自動決済が外れる。残るのは残高比ロスカットのみ

なぜ同じ「2000pips」で距離が変わるのか
原因は、pipsという単位の定義そのものにあります。ソースコードを確認すると、内部の換算はこうなっていました。
double pip = 10.0 * _Point;
sl = anchor - side * StopLossPips * pip;
tp = anchor + side * TakeProfitPips * pip;
_Point はその銘柄の最小価格刻みです。つまり「pips」は絶対的な距離ではなく、銘柄ごとの刻み幅に対する相対的な単位にすぎません。
刻み幅が同じでも、価格の絶対水準が違えば、同じ距離が持つ意味は大きく変わります。実例で比べます。
| 銘柄 | 価格帯の例 | SL 2000pips の距離 | 価格に対する比率 | 実用性 |
|---|---|---|---|---|
| XAUUSD(ゴールド) | 約 4,200 | 約 200 | 約 4.8% | 妥当 |
| BTCUSD(ビットコイン) | 約 65,000 | 約 200 | 約 0.3% | 近すぎる |
ビットコインで0.3%は、通常のノイズで簡単に到達してしまう距離です。実際の対処としては10000pips(約1,000=約1.5%)に変更して、ようやく実用的な幅になりました。
ここで重要なのは、「2000」という数値が間違っていたわけではないということです。ゴールド用としては適正でした。銘柄を変えた時点で、設定の意味が変わっていただけです。
SL幅を広げても、リスク額は増えない
「SLを5倍に広げたら、損失も5倍になるのでは」と思われるかもしれません。ロットが自動計算されている場合、そうはなりません。
同じくソースを確認すると、ロットはこの順序で決まっていました。
pipValuePerLot = tickValue * (pip / tickSize);
riskMoney = 残高 * リスク% / 100;
lossPerLot = StopLossPips * pipValuePerLot;
lot = riskMoney / lossPerLot;
式を見れば分かるとおり、SL幅は分母にあります。SL幅を5倍にすればロットは5分の1になり、掛け算の結果である想定損失額(リスク%)は一定に保たれます。
| SL幅を広げると | どうなるか |
|---|---|
| ロット | 自動的に小さくなる |
| 1回あたりの想定損失額 | 変わらない(リスク%のまま) |
| ノイズで刈られる確率 | 下がる |
つまりボラティリティの高い銘柄では、SLを広げてロットを落とすのが正しい対処です。SLを狭いままロットを大きくするのは、その逆をやっていることになります。
スプレッドも一緒に確認する
週末のビットコインはスプレッドが大きく開きます。スプレッドが広いということは、エントリーした瞬間の含み損が大きいということです。SL幅が狭いままだと、この初期不利だけでSLに近づいてしまいます。
銘柄を変えたときは、SL幅・ロット・スプレッドの3点をセットで見直すのが安全です。

このEAも記事も、AIと一緒に作っています。私はプログラマーではありません。MT5のEAもインジケーターも、Claude(AI)と対話しながら作っています。コードが書けなくても、作りたいものを言葉にできれば形になります。同じように「作る側」に回ってみたい方は、こちらから試せます。
https://claude.ai/referral/sWCPCcvVWQ
※紹介リンクです。
ナンピンとピラミッディングの境界
ポジションを追加するとき、多くの人が曖昧にしているのがこの区別です。判定基準は1つしかありません。平均建値が下がるか、上がるかです(ロングの場合)。
| 追加する位置 | 平均建値 | 意味 | |
|---|---|---|---|
| ナンピン | 最初のエントリーより下 | 下がる | 建値が有利になる。戻りで助かる |
| ピラミッディング | 最初のエントリーより上 | 上がる | 建値が不利になる。勢いに賭ける |
危険なのは、ナンピンのつもりでピラミッディングになっているケースです。「下がったから買い増した」と思っていても、それが最初のエントリーより上なら、平均建値は上がっています。
判断するときは、平均建値ではなくASK(買い値)のラインを見てください。実際に約定するのはASK側です。スプレッドが広い相場では、このラインがなかなか建値より下に入ってきません。
最初に買った位置より下でなければ、ナンピンにはならない。
ピラミッディング自体が悪いわけではありません。トレンドが明確なときは有効な手法です。問題は、どちらをやっているか自覚していないことです。

両建て(Hedging)で自動決済が外れる、という落とし穴
PW GoldCockpit には、保有中の差分ロットを反対方向に1クリックで建てて合計を中立化する「Hedging」ボタンがあります。3.27ロットを保有していれば、3.27ロットの反対売買が入り、実質ノーポジションと同じ状態になります。
損切りするか迷ったとき、いったん損益を凍結して冷静になるための機能です。ただし重大な副作用があります。
⚠️ 両建てを実行すると、SL/TPラインが消えます。さらにEAが管理する全ポジションのブローカー側SL/TPも外れます。つまり手動で全決済するまで、自動では決済されません。
これは不具合ではなく意図した設計です。両建て中は「買い基準か売り基準か」が定まらず、ラインを残すと誤った方向で即座に発火してしまうためです。実際にこの誤発火事故が起きたため、現在の仕様に変更されました。
したがって両建ては「安全装置」ではありません。むしろ自動決済を一時的に手放す操作です。実行したら、必ず自分で出口を決める必要があります。
唯一残る保険が残高比ロスカット(既定10%)です。これは両建て中も働き続けます。残高の10%を失った時点で全決済されるため、口座を守る最後の砦として機能します。この設定だけは切らないでください。
環境認識:陰線の形を見る
設定の話から少し離れますが、実際の判断で使っている見方も書いておきます。
陽線ではなく陰線を見てください。陽線は「上がる形」に見えるため飛びつきやすく、判断を誤らせます。一方、陰線には「下げようとして下げられなかった」という記録が残ります。
- 陰線に下ヒゲがあり、安値を更新せずに終わった
- 次の陰線もコマ足で、やはり安値を更新しなかった
- → 下げ止まりの可能性が高い
安値の切り上がりを数えるときも同じです。一番底・二番底までは待てますが、三番底まで来たら形が崩れていると判断します。そして「切り上がった」と言えるのは実際に高値を取った後だけで、途中では「上がりそうだ」までしか言えません。ここを曖昧にすると、願望でエントリーすることになります。
実務的なコツを1つ。ローソク足は小さく表示してください。拡大表示していると、わずかな値動きが「大きな陽線」に見えてしまいます。俯瞰すると同じ動きが誤差に見え、無駄なエントリーが減ります。
まとめ:銘柄を変えたときのチェックリスト
- SL幅(pips)を見直す — 価格水準が10倍違えば、比率は10分の1になる
- ロットを確認する — 自動計算ならSL幅と連動して変わる。リスク%は一定に保たれる
- スプレッドを確認する — 広い銘柄・時間帯では初期不利が大きい
- 残高比ロスカットを有効にしておく — 両建て時に残る唯一の自動保険
- 追加エントリーの位置を意識する — 建値より下でなければナンピンではない
設定値そのものより、「その数値が何を意味しているか」を確認する習慣のほうが重要です。今回のケースは、EAの設定を1つも変えていないのに、銘柄を変えただけでリスクが16倍に変わっていた例でした。
PW GoldCockpit は無料で配布しています
この記事で使用したMT5用の裁量操作パネル「PW GoldCockpit」(EA Ver1.15 / インジケーター Ver1.03)は無料で配布しています。期限はありません。特定の銘柄に固定されておらず、チャートに載せた銘柄でそのまま動作します。
無料で使用したい方は公式ラインで「GP希望」と書いてコメントください。
https://lin.ee/6rSmp8I
EAファイルは容量の都合でLINEではお渡しできないため、メールでの納品となります。あわせて、無料の裁量トレード動画教室も公募中です。
なお有料版のPW MTFS(サイン表示+自動売買つき)は今後も継続しています。GoldCockpit はそこからサインと自動売買を外した「裁量を学ぶための入口」です。すでに自動売買を運用している方にとっては、裁量を学ぶこと自体がリスクヘッジになります。
免責事項
本記事は情報提供および開発記録を目的としたものであり、特定の投資成果を保証するものではありません。記載した数値は筆者の実運用環境およびソースコードに基づく事実ですが、価格水準・刻み幅・スプレッドはブローカーや時期により異なります。設定は必ずご自身の環境で確認してください。取引はご自身の判断と責任において行ってください。

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