MT5のサインツールを20年見てきて、私がたどり着いた結論は一つです。本当に勝てるサインツールを開発するには、サインの自動化が必須である。——「よく当たる矢印」を作ることではなく、そのサインを機械が同じ手順で執行できる形にすること。それができて初めて、そのツールが勝てるのか負けるのかを証明できるようになります。
【本記事の検証範囲について】今回比較する旧版MTF3と新版MTFSは、パラメータ体系が根本的に異なるため、全機能を同一条件で比較することはできません。本記事は、両者に共通する基本機能(サイン判定+自動エントリー)だけを同一の市場条件で検証した結果です。旧版固有の救済(ナンピン)・マーチンゲール等の追加機能はすべてOFFにしています。
この結論を、自分の開発した新旧2バージョンの実データで示します。結果を先に言うと——勝率68.52%のツールが負け、勝率75.19%のツールが勝ちました。そしてその差を生んだのは「サインの精度」ではなく、自動化したからこそ計算できた、たった一つの数字でした。
検証条件:新旧2バージョンを完全に同じ土俵に乗せた
比較したのは、私が開発したサインツールの旧世代「PW MTF3」と、それを参照しつつゼロから書き直した新世代「PW MTFS」です。MTFSは軽量化を目的に完全に作り直したもので、両者は別物と言っていい設計です。
| 項目 | 設定 |
|---|---|
| 銘柄 / 時間足 | XAUUSD / M3 |
| 期間 | 2024.01.01 〜 2026.07(31ヶ月) |
| モデル | 100%リアルティック(実ティック検証) |
| 初期証拠金 / レバレッジ | 1,000,000円 / 1:2000 |
| ロット | 残高リスク1%(両者共通) |
| 損切り | 1500pips / 利確なし(両者共通) |
| 旧版の追加機能 | 救済・マーチンはOFF(基本機能のみ比較のため) |
勝敗を分けたのは「損益分岐勝率」だった

まず、両者の成績で最も意外だった事実から書きます。2つのバージョンは「損益比」がほとんど同じでした。
- 旧MTF3:平均勝ち 4,183円 / 平均負け 9,504円 → 損益比 0.440
- 新MTFS:平均勝ち 2,176円 / 平均負け 4,999円 → 損益比 0.435
どちらも「勝ちは小さく、負けは約2.3倍大きい」という同じ形をしています。この形の場合、トントンになるために必要な勝率=損益分岐勝率は約69.5%と計算できます(=1÷(1+損益比))。つまりこの2つのツールは、「69.5%を超えられるか」という一点だけで勝敗が決まる構造だったのです。
| 指標 | 旧 MTF3 | 新 MTFS |
|---|---|---|
| 実際の勝率 | 68.52% | 75.19% |
| 損益分岐勝率 | 69.44% | 69.67% |
| 分岐点との差 | −0.92pt(不足) | +5.52pt(超過) |
旧MTF3の勝率68.52%は、単体で見れば「よく当たるツール」に見えます。10回中約7回当たるのですから、普通は優秀だと感じるはずです。しかし損益分岐勝率にわずか0.92ポイント届かなかった。その0.92ポイントの不足を1,671回積み上げた結果が、後述する成績です。
結果①:資産曲線は正反対を向いた

同じ100万円が、31ヶ月後にどうなったか。新MTFSは1,213,793円まで伸び、旧MTF3は790,022円まで削られました。「わずか0.92ポイントの勝率不足」が、元本の約21%を失う結果に変わっています。
| 指標 | 旧 MTF3 | 新 MTFS |
|---|---|---|
| 総損益 | −209,978円 | +213,793円 |
| プロフィットファクター | 0.958(1未満=負け) | 1.319 |
| 取引数 | 1,671回 | 540回 |
| 1取引あたり期待値 | −125.7円 | +395.9円 |
| リカバリーファクター | −0.508 | 3.242 |
注目してほしいのは取引数です。旧版は1,671回、新版は540回。新版は取引を約3分の1に絞っています。「たくさんサインを出すこと」ではなく「出さないこと」が改善だった——これも、自動化して数えられたから分かったことです。
結果②:月次の振れ幅そのものが差になった

月ごとの損益を並べると、両者の性格の違いがはっきり出ます。
- 旧MTF3:プラス月 13/31ヶ月。最大 +208,682円、最悪 −156,613円
- 新MTFS:プラス月 19/31ヶ月。最大 +71,945円、最悪 −25,659円
旧版は一撃で稼ぎ、一撃で失う形でした。20万円稼いだ翌月に15万円失う——この振れ幅は、実際に自分の資金で運用すると精神的に耐えられません。新版は「浅く刻んで積む」形に変わりました。1回の最大利益は小さくなりましたが、続けられる形になったということです。
結果③:最大ドローダウン 40.97% → 5.21%

私が最も重く見ている指標が最大ドローダウン(資産の最大下落幅)です。
- 旧MTF3:−413,439円(40.97%)
- 新MTFS:−63,956円(5.21%)
100万円が一時60万円を割る運用と、95万円で踏みとどまる運用。数字上は同じ「サインツール」でも、使う人の体験はまったく別物です。深く沈まないことが、続けられるかどうかを決めます。
なぜ「サインの自動化」が必須なのか

ここまでの数字はすべて、サインを自動売買化していたから測れたものです。もし旧MTF3が「矢印が出るだけのインジケーター」のままだったら、どうなっていたか考えてみてください。
- 同じ条件で試せない:手動では、エントリーの迷いや見送りが混ざり、同一条件の再現ができない
- 損益分岐勝率を計算できない:平均勝ち・平均負けが正確に取れず、「あと0.92ポイント足りない」に気づけない
- 改善点が特定できない:どこを直せば勝ちに転じるのかが、感覚論になる
おそらく私は「勝率68%、よく当たる良いツールだ」と信じたまま売り続けていたでしょう。負けている事実にすら気づけなかった。これが、私が「サインの自動化は必須である」と言い切る理由です。自動化は、利便性のためではありません。自分のツールを疑い、証明するための手段です。
そして自動化して初めて、改善は具体的な作業になります。今回で言えば「取引数を1,671回から540回に絞り、勝率を68.52%から75.19%へ引き上げる」という、数値目標のある開発に変わりました。MTFSをゼロから書き直したのは、この目標を達成するためです。
まとめ|サインツールは「証明できる形」にして初めて武器になる
- 勝率だけを見ても、そのツールが勝てるかは分からない。基準は損益分岐勝率
- 旧MTF3は勝率68.52%で分岐点に0.92pt届かず、31ヶ月で−209,978円・最大DD40.97%
- 新MTFSは勝率75.19%で分岐点を5.52pt超え、+213,793円・最大DD5.21%
- この差を発見し、改善できたのはサインを自動化して同一条件で検証できたから
サインツールを選ぶときも、作るときも、問うべきは「よく当たりそうか」ではありません。「その主張は、同じ条件で再現して確かめられるか」です。自動化されていないサインツールは、良くも悪くも永遠に証明されないまま残ります。
よくある質問(FAQ)
Q. 勝率が高いのに負けるのはなぜですか?
A. 1回あたりの負け額が勝ち額より大きい場合、必要な勝率(損益分岐勝率)も高くなるからです。今回の例では平均負けが平均勝ちの約2.3倍あるため、約69.5%の勝率がなければトントンになりません。勝率68.52%は「高い」ように見えて、この基準には届いていませんでした。
Q. 損益分岐勝率はどう計算しますか?
A. 「1 ÷ (1 + 平均利益 ÷ 平均損失)」で求められます。平均利益2,176円・平均損失4,999円なら、1÷(1+0.435)=約69.7%です。この数字より実際の勝率が高ければプラス、低ければマイナスになります。
Q. 旧版が負けていたことを公表して大丈夫なのですか?
A. 隠すほうが問題だと考えています。開発者が自分のツールの弱点を測れていないなら、それは検証していないのと同じです。旧版の数字を公開できるのは、自動化して検証したからであり、その積み重ねが新版につながっています。
Q. この検証で両者の優劣は完全に決まりますか?
A. いいえ。冒頭に記したとおり、両者はパラメータ体系が根本的に異なるため、今回は共通する基本機能のみを比較しています。旧版固有の機能を含めた評価ではない点はご承知おきください。

EAデザイナー空(くう)は現在も、サインツールと自動売買化によるサインの有効性を証明するため、日夜研究に励んでいます。フォワードテストの結果も、良い月も悪い月も隠さず公開していきます。続報をお待ちください。
【免責事項】本記事の検証結果は、過去の一定条件下でのバックテスト(XAUUSD・M3・100%リアルティック・初期証拠金100万円・リスク1%)に基づくものであり、将来の同様の結果を保証するものではありません。また前述のとおり、両バージョンはパラメータ体系が異なるため、共通する基本機能のみの比較検証です。FX・CFD取引には元本を失うリスクがあります。実際の運用はご自身の判断と責任において行ってください。本記事は投資助言を目的としたものではありません。

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